切っ掛けは全くの偶然だった。
「コズミックレイヤー」「イーグルカフェへようこそ!」で撮影監督を務めた八木さんに電話した時、彼の口から意外な言葉が出た。
「今度怪獣映画をやるんだ」
詳しく聞いてみたら、大半のスタッフは私と面識がある人ばかり。
というより、知らない人の方が少ない(笑)。
チャンスだと思った。
「ライオン仮面」「コズミックレイヤー」でもお世話になった制作プロデューサーでもある
岡野さんに頼み込み、昨年の11月、林家しん平監督の「深海獣雷牙」の撮影に参加した。
私が参加したのは全部で7日間。
特撮パートの追撮&熱海の撮影の2日間を除き、殆どの撮影に参加した。
参加した動機は
「これを逃すと本格的な怪獣映画の撮影に入れないかもしれない」という事。
実際、東宝でゴジラの新作が製作される可能性は、ここ数年は無い
(東宝映画社長でミレニアムゴジラのPでもある富山省吾さんの語る
「2013年ゴジラ復活計画」の裏を取ったが、現段階では願望に近いものらしい)。
円谷もこの先どうなるかわからない。
8億という10年前では驚異的なヒットだった「大決戦!超ウルトラ8兄弟」の興行収入も、
邦画が当たり前のように10億を超える今ではインパクトが薄い。
昨年復活した「ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発」の興行収入も燦燦たるものだった。
関係者から直に数字を聞いてるので間違いない。ミクシには書けても、ここでは書けない。そのくらい酷い。
そもそも今年(2009年)制作に入る特撮映画が本当に少ないらしい。
関係者の間でマジで仕事の心配をしている、と聞いた。
期待と不安が入り混じった某アニメの実写版も中止になったそうだ。
と、まあザッと書いてみたが、日本における怪獣映画の悲惨な状況が、少しは伝わっただろうか。
だからこそ、今回の撮影はどうしても参加したかった。
「雷牙」は規模は小さいとはいえ、本格的なミニチュア+スーツを使用した怪獣映画だ。
私自身はそんなに大した事は出来ないのだが、少なくとも体験すれば経験値は1以上にはなる。
1と3では違いは無いかもしれないが、ゼロと1では大きな隔たりがあるのだから。
で、実際に体験した感想だが・・・
全てが初体験だらけだった。
尻尾の動きとかは映像で知ってるはずなのに、 実際の撮影ではこんなに邪魔なものだったのか(笑)。
改めて「怪獣の体と人体は違う」事を認識させられた。
怪獣のスーツが、役者の体重&動きの為に1日で伸びるとか。
中の人の苦労とか。
着付けは最低二人、できれば3人欲しい、とか。
ミニチュアは美術部で作ったものとマーブリング・ファインアーツでレンタルしたものを使用している。
裏に「ウルトラマン映画」とか書かれてるものもあった(笑)。
余談だが、今回のセットは後に別の作品(内緒)で使われる事となる。
弾着とか、火を出す道具の使い方と実際の画の見え方は、
知識としては知っていても、体感して初めてわかる事が多かった。
操演のピアノ線の動かし方一つでも、こうも変わるものか、という事実。
私もちょこっとだけやったのだが・・・
ちなみに今回の國米さんを初めとした操演チームは。後日、ほぼ同じメンツで「仮面ライダーG」に参加していた。
つか火薬の爆破シーン(バイクのカットね)も多分そう。
特効の機材はスモークマシンのような既製品ではなく、各々の職人さんの自作&独自のノウハウに拠るところが大きい。
そういった機材のノウハウはいわば企業秘密であり、 今回宣材用に撮った写真にも注意が必要だった。
これらの事は特撮業界では常識なのだが、 そんな事は体験談に出てくるわけでもないし
普通の映画関連の書籍・雑誌に出る話でもない。 実際に体験してみなければわからない事なのだ。
メモリー記録のハイビジョンカメラ(XDCAM EX PMW-EX3)の撮影も貴重な経験だった。
一応CINE ALTAを謳ってるカメラで劇場映画も撮れるレベル。
「スロー&クイックモーション」機能もあるので怪獣映画にも向いている。
記録媒体がメモリなので、テープと違って前の映像を素早く呼び出せるのもいい。
何と、特撮マンの長年の夢だった、その場での合成(簡易だが)も可能なのだ。
予算が無い現場は一日に撮るカット数を増やさなくてはならない。
今後制作費の圧縮が囁かれる状況なので、うってつけではなかろうか。
ちなみに怪獣ものの一日の撮影カット数だが、おおよそ以下の通り。
ゴジラ・・・10カット
ガメラ・・・2カット
ゴッドマン(新作)・・・50カット
まあゴッドマンは無理です。普通(笑)。
今回の撮影は本当にいい経験だった。
この経験は私の作品でも生かしていきたい。
つか企画はあるんだけどね。
金がなー。
概算で予算出してみたら一千万超えてた( ´,_ゝ`)プッ
実はドラマパートの方でも色々あったのだが・・・
その話は別の機会にでも。